投資見通し
経済と市場
セクション4:経済と市場
知っておくべき重要なポイント
ファンダメンタルズの変化
コロナ禍から5年目になろうとする今、世界経済のファンダメンタルズが変化していることは明らかです。低成長、低インフレ、低金利だったコロナ禍前の世界はもうありません。そして過去の世界は戻ってきません。在宅勤務やリモートワークの普及により、労働市場はより柔軟になりました。AIはテクノロジーへの投資ブームを引き起こし、サービス・セクターの仕事を変革しています。高水準の雇用レベルが続き、労働力を節約するための投資が増えています。こうした傾向が潜在成長率を押し上げるでしょう。コロナ禍で景気が下向き、政策決定者が財政政策と金融政策の双方で積極的な刺激策を行った結果、インフレが高まりました。そうしたインフレ圧力を抑えるために今では各国の中央銀行は引き締めに動いていますが、財政政策はまだ極端に緩和的な状態で、リスクは依然、インフレ高進の方に傾いたままです。
新たな経済体制
こうした新たな動きは既に経済指標に現れ始めています。米国のインフレ率(年率コアPCEで測定)はコロナ禍前、120カ月中116カ月でFRBの目標値2%を下回る水準でしたが、今では43カ月連続して目標値を上回る水準が続いています。米国実質GDP成長率は過去 5年間、コロナ禍における大幅な経済縮小時も含めて平均2.3%と、2010-2019年の平均1.8%を大幅に上回る水準で推移しています(図表2)。私たちは、経済がいわゆる「オールドノーマル」に戻ることはなく、全体的な名目成長率は今後、大きく上昇すると考えています。米国では政権交代に伴い、減税の可能性も含め、税制改革によって今後成長率とインフレ率は高まるとみています。
今後向かう先は?
これら根の深い長期的な傾向が現実に反映されるまでには時間がかかります。中長期的な見通しを形作る要因も、短期的な動向によって簡単に覆され、経済を均衡状態とは程遠いところへ押しやる可能性もあります。幸い、目先に大きな混乱は予想されず、向こう数四半期はおそらく今後の数年間とほぼ同じ状況になるでしょう。インフレ率は目標水準を上回る状態が続いています。住宅価格やその他のコア・サービスからはディスインフレが進むでしょうが、全体的なインフレ率は引き続きFRBの目標を上回るでしょう。成長は鈍化する見込みですが、コロナ禍前の水準まで落ち込むことはないと思われます。今年に入って失業率は上昇していますが、所得の伸びは依然として堅調で、支出は着実に拡大しています。労働市場が今後さらに緩和してもその傾向は続く見込みです。
コロナ禍から5年目になろうとする今、世界経済のファンダメンタルズが変化していることは明らかです。
名目成長率が上昇
究極的には、市場パフォーマンスを主に牽引するのは名目成長率です。名目成長率が株式の全体的な企業収益のポテンシャルを決め、債券の利回り水準を左右します。また、米ドルを左右するのも、世界他国に対する米国の名目成長率です。Nuveenの予想では、名目成長率はコロナ禍前の4%未満でなく、5%近辺に落ち着くと思われます。つまり、多くが予想しているほど金利は低下せず、リスク資産は下支えられる確率が高いということです。Nuveenでは、10年物米国債利回りが概ね現行水準のボックス圏にとどまり、FRBの利下げは多くが予想するよりも緩やかなペースで、利下げ幅も小幅になると予想しています。
関連インサイト
投資見通し
2024年第4四半期の展望
景気後退との闘い FRBの動きは遅きに失したか
景気後退との闘い FRBの動きは遅きに失したか
9月にFRBが実施した50ベーシスポイントの利下げは確かに金融市場を喜ばせたが、我々は景気後退を回避するにはFRBの決定が「少なすぎて遅すぎる」のではないかと懸念している。
オフィス