2024年12月26日
投資見通し
経済と市場
セクション3: 経済と市場
知っておくべき重要ポイント
最終局面が勝負となる可能性
通常のスピード競争と違い、景気後退とのレースには、あらかじめ決められたゴール地点がありません。戦後米国史上最短の景気拡大は、1980年から1981年のたった12ヵ月間でした。コロナ禍の景気後退により終焉を迎えた拡大期は128ヵ月という記録的な長さでした。前回の2020年4月の景気後退以降、米国経済は驚異的なペースで前進してきました。このレースの観客は、今こそ「ゴールは近いのか。それとも十分なランウェイがあるのか。そして今何をするべきなのか」と尋ねるべきでしょう。
当社では2025年の米国およびグローバル経済の基本シナリオは、緩やかな景気後退であると想定しています。それはすなわち、現在は景気拡大の最終局面ではあるが、投資家が積極的にリスクオフ・シナリオにあわせたポジションをとるには早すぎるということを意味します。歴史的に、株式市場は景気後退が始まる2ヵ月前まで上昇していました(下記図表)。経済は最終局面にある可能性が高いものの、現在のマクロ環境は健全なレベルのリスクエクスポージャーを持つには問題ないことが示唆されています。
労働市場の問題は深刻化している
金融引き締めの効果により、米国労働市場の問題は深刻化し、拡大しています。既に雇用創出のペースはコロナ禍前のトレンドを下回る水準まで低下しており、失業率も上昇傾向です。上昇の一因はポジティブなサプライサイド・ダイナミクスで、働き盛りの世代の労働参加率が過去20年以上の期間の最高水準に到達していることです。しかし、これは労働力需要の減少という悪い要因も反映しています。雇用は減速し、失業状態で過ごす人々の数が増えています。求人数や自発的離職率など、将来の労働市場の状況に関する最良の先行指標の一部は軟化しています。当社では、今後数四半期にわたり失業率は上昇し、これが全体的な経済成長の足かせになると考えています。
インフレ懸念からの脱却
全体のコアインフレ率は、いくつかの要因により、3ヵ月年率ベースFRBの目標値である2%水準に近づいています。第1に、引き締め政策が労働市場に緩和圧力をもたらしています。賃金インフレは年率6%近辺でピークを迎え、現在は4%近傍まで低下し、コアサービス価格の軟化につながりました。第2に、住宅関連は目標を上回るペースで推移しているものの、今年に入ってから大幅に減速しており、先行指標はさらなる改善を示しています。第3に、グローバル経済の成長率は全体的に軟化しており、欧州は前年比約+0.5%、中国は1990年代以降で最も弱い成長率(コロナ禍のロックダウン期を除く)となっています。最後に、地政学上の懸念は依然リスクではあるものの、ここ数ヵ月は悪化しておらず、グローバルな輸送費用は12月のピークから40%程度低下しています。
経済は最終局面にある可能性が高いものの、現在のマクロ環境は健全な水準でのリスクエクスポージャーを正当化できると考えられます。
FRBは素早いというよりはゆっくりとした動き
成長が鈍化し、インフレは目標値に到達し、景気後退のリスクが高まる中でFRBが利下げを開始したことは理にかなっています。しかし、今回の利下げサイクルが50bpという大幅な引き下げとともに開始されたにも関わらず、市場の今後の利下げについての見方は楽観的すぎるかもしれません。FRB高官は、加速もしくは一時停止の柔軟性をもちつつも、着実な動き(すなわち各FOMC会合で25bpの引き下げが行われる可能性を示唆)が望ましいというスタンスを示してきました。これは、3.25%から3.50%近辺で中立的なスタンスに移行するにあたり、利下げの効果を測る時間の余裕を持つことを可能にします。当社では、FRBはそうした水準に来年半ばに到達するだろうとみています。
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