2024年12月26日
投資見通し
ポートフォリオ構築テーマ
セクション2: ポートフォリオ構築テーマ
市場はほぼ1年前にFRBの利下げ可能性を織り込み始めました。そして、FRBの政策がようやく転換された今、投資家は米国およびグローバル経済が景気後退に向かっているかどうかに注目しています。それと時に、現在の金利環境 が市場にどのような影響を与えるのか、まもなく行われる米国選挙のインパクトがどのようなものになるのか、多くの人が疑問に思っています。 確かに、未知数な部分はたくさんありますが、当社では引き続き、グローバルマクロ経済環境の展開に合わせ、様々なリスクのバランスを取り分散化を図り、投資機会を捉えるポートフォリ オを構築するための投資戦略は数多くあると考えています。
アセット・クラスの「ヒートマップ」
各アセット・クラスに対する当社の見方を示すクロスアセットの見解は、当社が、グローバルな金融市場において、相対的に最も有望な機 会がどこにあると考えているのかを示します。特定のポートフォリオについての見解を示すものではなく、「新たな資金を投入するにあたり、当社の確信度が最も高い見解は何か?」という質問に答えるものです。これらの見解は、1年間の投資期間で、長期的な成長を求める米ドル・ベー スの投資家を想定しています。
主要なポートフォリオテーマ
- うさぎとかめの中間的なちょうどいい投資先を見つけだす
市場は2023年12月には既にその後のFOMCでの利下げを織り込み始めていました。金利低下の恩恵に期待して過度にディフェンシブなポートフォリオにシフトした投資家は、今日、努力の甲斐もない結果に終わっていることでしょう。
過去1年において、当社では金利の展開のタイミングを計ろうとすることについて警鐘を鳴らしてきました。その代わりに、歴史的高水準の債券利回りを利用し、クレジット投資全般においてリバランスを行って戦略的資産配分に戻し、リアル・アセットで分散化を図るよう推奨してきました。同様に今回も、景気減速が予想される中、過度に保守的になることには注意喚起をしたいと思います。全体として、当社のヒートマップからもわかるように、(重要な条件つきではあるものの)概ねリスクオンのポジショニングに価値があると引き続き考えています。
債券については、市場は利下げという新しい環境について既に織り込んでしまったと考えています。結果、当社では、全体としてはデュレーションニュートラルなポジショニングで、一般的には変動利付よりも固定利付を選好することを推奨します。具体的なクレジットのセクターでは、投資適格社債については全般的に妙味が薄いという見方を継続します。スプレッドがタイトであり、デュレーション・プロファイルは当社が適切と考える水準よりも長くなっているように思われます。それとは対照的に、過去平均よりもスプレッドが拡大している証券化資産に対する見方を引き上げました。金利低下局面ではシニア・ローンのパフォーマンスが良好になる可能性もありますが、変動金利であるため(依然として相対的に高い固定金利利回りを固定することが可能な)ハイイールド債と比較すると若干魅力が薄れます。
株式については、米国大型株がディフェンシブとグロース両方の特性を兼ね備えていると考えます。それ以外の先進国市場では、日本株に機会が生じています。追加的なリスクテイクを行いたい投資家にあっては、(景気後退に先立ちアンダーパフォームする傾向がある)米国小型株よりも新興国株に対する選別的な投資を推奨します。さらに、オルタナティブ投資、プライベート市場そしてリアル・アセットへと幅広く分散を進め、リスクへのエクスポージャーを幅広く拡大することを推奨します。パブリック・インフラ、プライベート・インフラおよびパブリック不動産は魅力的と考えます。プライベート不動産は上昇基調が見込まれ、プライベート・クレジットおよび農地にも投資機会があるとみています。 - プライベート・クレジットの上昇はまだ終わっていない
ここ数年でプライベート・クレジット市場に流入した資産の大きさ(とリターンの大きさ)を見て、上昇局面はもう終わったのではないかと考える投資家も増えています。しかし、その疑念に対する当社の答えは「ノー」です。現時点で当社は一般的には固定金利の投資先を選好しているものの、プライベート・クレジットだけは大きな例外です。投資家の関心は引き続き高く、需要は強く、ボリュームの拡大は継続しており、M&Aが増加すると考えています。これは引き続き追い風になるでしょう。また、プライベート・クレジットの取引の中には金利低下に伴いレバレッジ・レシオを引き上げられるものも出てくると当社は考えており、それによりこうしたディールの魅力がさらに増す可能性があります。また、金利が低下すれば、事業の元利金返済カバー率も改善するでしょう。
当社のグローバル経済の成長が減速するとの見通しに基づくと、プライベート・クレジット投資においては、よりディフェンシブなポジショニングに重点を置くことを推奨します。当社ではキャッシュフロー創出力が高く、価格決定力を持つ企業を選好し、ミドル・マーケットのサービスに特化したビジネスに特に妙味があると考えています。先行きの景気後退が予想される中、プライベート・クレジット市場に一定の懸念を持つのは理にかなっているものの、当社では緩やかな景気減速であれば、市場のファンダメンタルズは乗り切れると考えています。
- 考慮すべきもう一つの闘い:米国選挙
世界中の投資家が米国大統領選挙および連邦議会議員選挙の結果が金融市場およびポートフォリオ構築に与える影響について思案しています。当社では、政治よりも投資のファンダメンタルズの方が重要だと考えてはいるものの、選挙シーズンと予想される政策変更がいくつかの影響を及ぼす可能性があると予想しています。
- 市場ボラティリティは高水準で推移する可能性が高い(おそらく選挙戦終了後も)。今回の選挙サイクルにおいては、世界各地で勃発している複数の軍事紛争が金融市場を揺るがす可能性に加え、(AIブームにより加速した)フェイクニュースの増加によりボラティリティが高まると予想。選挙後も、地政学的紛争や、税制変更の可能性、財政政策や連邦債務上限を巡る議論、その他根強く残っている諸問題により、不透明感が続く可能性がある。
- 税制の変更はほぼ確実に起こることであり、全般的な増税が見込まれる。2017年の減税・雇用法の条項の多くが2025年に失効を迎えることを考えると、税制が焦点となる。様々な結果が考えられるが、今後数年間で、多くの米国人がより厳しい税負担に直面すると予想される。これはすなわち現在計画を立てておくことの重要性を強く示している。
- 選挙サイクルはキャッシュからの乗り換えを示唆している。過去数四半期において当社では、不確実性の高まりを受けて高水準のキャッシュを持ち続けていた投資家に対し、債券やその他の資産に再配分することを推奨してきた。選挙シーズンによってキャッシュからリスク資産にシフトすることがさらに求められている。過去7回の米国の選挙サイクルでは、キャッシュ(1-3ヵ月財務省証券)は他の債券セクターおよび株式に対してアンダーパフォームしている(下記図表)。
注目点:地方債への投資は引き続き魅力的
地方債を選好すべき理由は、魅力的なインカムを提供(特に税引き後リターンの獲得を目指す投資家向け)、信用ファンダメンタルズが強固であるのが特徴、テクニカルな背景がしっかりしている、などいくつもあります。
年末に向かうにつれ、当社では短期金利が若干低下し、地方債のイールドカーブがスティープ化すると予想しています。これが地方債のデュレーションを長期化させることのメリットを物語っています。また、金利環境の変化による追い風が期待できないとしても、地方債の利回りは歴史的に高く、これはすなわち現在のインカムは金利低下やスプレッドの縮小がなくても魅力的なリターンを獲得するための一助となることを意味します。
また、課税地方債も、米国外の投資家、機関投資家、またはこの市場セグメントに注力するその他の投資家にとって魅力的であると考えています。スプレッドはグローバル債券市場の他の分野と比較して魅力的でファンダメンタルズは引き続き非常に健全です。
当社が最も確信を持つ見解
インフラは経済成長鈍化が見込まれる中で持ちこたえられる可能性と、依然根強いインフレを乗り越えるという二つの利点があります。パブリック・インフラとプライベート・インフラ双方とも魅力がありますが、特にパブリック・インフラではバリュエーションに妙味があります。
プライベート・クレジットは 引き続き魅力的です。投資家の需要は旺盛で、投資ファンダメンタルズは力強い様相を呈しています。当社では、景気低迷時を乗り切ることができるとされる、よりディフェンシブなセグメントを引き続き選好しています。
地方債は税引き後のリターンを追求している米国個人投資家のみならず、クロスオーバー投資を行っている機関投資家および米国外の投資家にとって、引き続きいくつもの利点があると考えます。
関連インサイト
オフィス