2024年5月27日
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第4回 ヌビーン・グローバル機関投資家調査
主な調査結果
- 機関投資家の大多数は、投資を通じてエネルギー移行の進展に大きな影響を与えることができると認識。選好する配分先のトップは、代替エネルギーと新たなインフラ・プロジェクト。
- 機関投資家の半数以上が、プライベート市場へのエクスポージャーを増やす予定であり、プライベート・クレジットとプライベート・エクイティを主な配分先として選好。
- 債券では社債が最も選好され、約半数が投資適格債券への配分を増やす予定。
米国教職員退職年金/保険組合(TIAA) の資産運用部門であるNuveen LLC(本社 米国、CEOホセ・ミナヤ)の日本現地法人、ヌビーン・ジャパン株式会社(本社 東京千代田区、代表取締役社長 鈴木 康之、以下「ヌビーン・ジャパン」)は、第4回ヌビーン・グローバル機関投資家調査の結果を発表しましたのでお知らせします。
毎年実施している同調査は、日本を含む世界の800の機関投資家を対象とし、今後1〜2年間に18兆ドルの資産がどのように運用・管理されるかを明らかにすることを主眼に実施したものです。
新たな市場環境においてポートフォリオを構築する上で、機関投資家の関心が3つの明確なテーマに集中していることが今回の調査から分かりました。1つ目は、エネルギー移行の進展に伴いエネルギー革新やインフラ・プロジェクトへの投資意欲が高まっていること。2つ目は、オルタナティブ投資への配分が増加する中で、プライベート・クレジットとプライベート・エクイティの優先順位が上がっていること。3つ目は、機関投資家が適切なタイミングで投資機会を捉える態勢を整える方法として、ポートフォリオの一部をより質が高く流動性がある債券商品で保有するようになっていることです。
機関投資家はエネルギー移行に向けた自らの影響力を認識
「グローバル機関投資家調査」に回答した世界の機関投資家の半数以上(55%)、日本の機関投資家では3分の2以上(68%)が、投資を通じてエネルギー移行に大きな影響を与えることができると感じており、世界の機関投資家の57%、日本の機関投資家の62%が代替エネルギー(再生可能エネルギー、原子力、水素)へ投資を行っている、または投資を模索していると回答しています。さらに、世界の機関投資家の51%、日本の機関投資家の46%がエネルギー貯蔵/送電網や蓄電池を含む新しいインフラ・プロジェクトへの投資に関心を持っています。
アジア太平洋の企業年金基金では、自然を基盤としたエネルギー移行の解決策への関心が平均を上回り、ドイツの年金基金では、炭素クレジット市場への関心が平均を上回りました。また日本の機関投資家は脱炭素化に必要な原材料に対して平均よりも高い関心を示しました。一方、北米の公的年金は、レガシー(伝統的)インフラのアップグレードに平均以上の関心を示しました。
機関投資家の約90%(グローバル 88%/北米 81%/欧州・中東・アフリカ 93%/アジア太平洋 89%)が、何らかの形でエネルギー移行に注目しています。9%は、「移行に向けた先駆者としての利点を活用している」と回答し、最も多い37%は、「経済における現行のエネルギー・ミックスと足並みを揃えるようにポートフォリオを構成している」と回答しています。一方、23%は「(取り組みに)着手した段階」、19%は「規制要件を満たすために必要なことをしている」と回答しています。
ヌビーン・グローバル・クライアント・グループの統括責任者であるマイク・ペリーは、次のように語っています。「投資家は自分たちの影響力を明確に理解しており、政府の政策と技術革新が、今後1年間のエネルギー移行への投資にとって最大の追い風になると見ています。一方39%が政治問題化を最大の逆風と考えており、最も魅力的な投資機会を発掘、誘導してきた豊富な経験を持つアクティブ運用会社と組むことの重要性を強調しています」
魅力的なプライベート市場
機関投資家は引き続きプライベート市場に投資しており、55%(北米 60%/欧州・中東・アフリカ 49%/アジア太平洋 59%)が、今後5年間にプライベート・クレジットとプライベート・エクイティへの投資を増やことを計画していることが明らかになりました。しかし、この傾向は、72%(北米 73%/欧州・中東 ・アフリカ67%/アジア太平洋79%)が今後5年間にプライベート投資を増加させる予定であった昨年の調査結果ほど顕著ではありません。
また、その他の資産について、投資を増やす予定と回答した比率は、プライベート不動産が24%、コモディティが22%、ヘッジファンドが21%、私募債が19%、森林と農地がともに12%となりました。日本においては34%の機関投資家がプライベート不動産への投資を増やす計画であると回答しています。
アジア太平洋の公的年金が最も積極的で、72%が今後5年間でプライベート市場への投資を増やす予定です。北米の保険会社や基金・財団もそれぞれ68%、71%が同様の回答をしており、それほど地域差はありませんでした。
オルタナティブ投資を検討している機関投資家の間では、プライベート・クレジットとプライベート・エクイティが最も魅力的な資産クラスであると考えられており、北米の公的年金(57%がプライベート・クレジットを増やす予定)、と日本の機関投資家(59%がプライベート・エクイティを増やす予定)が先陣を切っています。プライベート・クレジットとプライベート・エクイティへの関心は全地域で総じて高いものの、全ての地域で最も選好されているわけではありません。ドイツの機関投資家の間では、プライベート・インフラが最も選好されました(53%)。
機関投資家の多くがリスク回避を模索
調査対象の機関投資家の約3分の2(65%)(北米 62%/欧州・中東・アフリカ 68%/アジア太平洋 63%)は、リスクとリターンの管理手法を再構築する新たな市場環境にあると回答しています。なお、日本の機関投資家おいては57%が同様の回答をしており、他地域より若干低くなっています。また、8割(北米81%/欧州・中東・アフリカ 81%/アジア太平洋 78%)が、超低金利時代を脱し、長期的な高金利環境に入りつつあると答えています。ただし、日本では同様の回答は66%と、他地域より若干低くなっています。
また、機関投資家の半数(グローバル50%/北米53%/欧州・中東・アフリカ48%/アジア太平洋50%)が2024年にポートフォリオのデュレーションを増やす予定です。昨年の調査では、デュレーションの延長を計画している機関投資家はわずか39%でした。同時に、「インフレ・リスクの軽減」と「現金」を増やす予定の投資家の割合は、昨年の調査と比べて減少しています(それぞれ64%から41%、41%から37%)。ただし、日本の機関投資家では昨年の調査結果から変化はなく「インフレ・リスクの軽減」を増やす予定との回答は55%と変わらず、「現金」を増やす予定との回答も昨年の43%から今年は42%とほぼ変化がありませんでした。
負債を重視する投資家にとって、金利の上昇とそれに伴う資金調達状況の改善は、デュレーションの追加によってポートフォリオのリスクを軽減する好機となります。
金利が正常化したことで、多くの投資家にとって株式投資を削減し、質の高いパブリックおよびプライベート債券に配分を増やすことでリスクを回避する新たな機会が生まれました。昨年の調査と比較すると、株式エクスポージャーを減らしている機関投資家(グローバル 40%/北米 33%/欧州・中東 ・アフリカ 44%/アジア太平洋 44%)が、増やしている機関投資家(グローバル 28%/北米 25%/欧州・中東 ・アフリカ26%/アジア太平洋37%)を大きく上回っています。なお、日本おいては株式投資を減らしている機関投資家(43%)と増やしている機関投資家(40%)の数はほぼ同数でした。
機関投資家の約半数(グローバル 48%/北米 49%/欧州・中東・アフリカ 49%/アジア太平洋 44%)が投資適格債券への配分を増やす予定と回答しており、これは今後の景気減速に対する投資家の予想を反映していると思われます。また、38%が私募債への配分を増やすとしており、投資適格債が最上位を占めています。日本の機関投資家が選ぶ債券のトップは私募債で、その多くは私募債の中でもプライベート・インフラ・デットへの投資拡大を計画しています。また、日本の機関投資家はプライベート・インパクト・デットに対する関心も平均より高くなっています(グローバル平均21%に対し日本は36%)。
また、約5分の1の機関投資家が、今後2年間で、証券化デット(ローン担保証券:CLO、住宅ローン担保証券:MBSなど、22%)と非投資適格債券(ハイ・イールド社債、広範に組成・販売されるシンジケート・ローンなど、21%)への配分を増やす予定であると回答しています。
「すべての債券セグメントで、社債が機関投資家の関心を集めています。投資適格債市場、非投資適格債市場、および私募債市場に投資する投資家にとって、社債は最も重要な選択肢となっています。機関投資家はこれらの固定金利債券商品に以前より大きな価値を見出すようになっています。また、負債を重視する機関投資家にとっては、高利回りの固定金利債は負債のマッチングを強化する魅力的な手段となっています」とペリーは述べています。
私募債への配分を計画している機関投資家の間では、投資適格社債が全体として最良の選択肢でしたが、投資家のタイプによってばらつきが見られました。保険会社はパブリック・インフラ・デットをより強く選好する一方、基金や財団はプライベート・オポチュニスティックを、北米の公的年金はシニア・ミドルマーケット・ローンをより選好しました。
シニア・マネージング・ディレクター兼ヌビーン・ジャパン代表取締役社長の鈴木康之は、次のように語っています。「当社のプライベート・マーケット、責任投資およびマルチアセット・ポートフォリオ構築における深い専門知識を活用して、不確実性が高まる新しい市場環境に対応するためにポートフォリオ強化に取り組む機関投資家の皆さまのアセットアロケーションをサポートしてゆく所存です」
ヌビーン・グローバル機関投資家調査について
ヌビーンとCoreData社は2023年10月から11月にかけて、北米(全体の33%)、欧州・中東・アフリカ(同43%)、アジア太平洋(同24%)にまたがる世界の機関投資家800社を対象に調査を実施しました。日本では65の機関投資家が調査対象となりました。回答者は、企業年金、公的/政府年金、保険会社、基金、財団、スーパー・アニュエーション・ファンド、ソブリン・ファンド、中央銀行の意思決定者です。本調査の回答者は、資産規模が100億ドル超(53%)、100億ドル未満(47%)の組織を代表しており、運用資産の最低規模は5億ドルでした。本調査は信頼区間95%、許容誤差は±3.5%です。
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