2023年3月28日
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第3回ヌビーン・グローバル機関投資家調査
- 機関投資家の半数以上が、現在の投資環境はこれまで経験したことのないものであると回答
- 機関投資家の64%がインフレリスクの軽減を強化し、2年以上にわたりインフレ対応戦略を採用すると予想
- ほとんどの投資家が投資判断に気候変動リスクを考慮
- インパクト投資がより一層重要に
米国教職員退職年金/保険組合(TIAA) の資産運用部門であるNuveen LLC(本社 米国、CEOホセ・ミナヤ)の日本現地法人、ヌビーン・ジャパン株式会社(本社 東京都港区、代表取締役社長 鈴木 康之、以下「ヌビーン・ジャパン」)は、第3回ヌビーン・グローバル機関投資家調査の結果を発表しましたのでお知らせします。
前回の調査時と比べると、地政学リスク、戦争、高金利、インフレショック、気候変動リスク、社会変動、人口動態の変化、脱グローバル化の動き等により、変化のスピードが加速しています。第3回ヌビーン・グローバル機関投資家調査は、大きく変化する世界にどのように対応し、どのように考え投資を行っているかを明らかにすることを主眼に実施しました。
経験したことのない大きな変化に対応するポートフォリオの構築
機関投資家の80%が、世界は大きく変化しており、ポートフォリオ戦略もこの変化に対応しなければならないと回答しています。また、世界の投資家の半数以上が、現在の投資環境はこれまで経験したことのないものであると回答しています。日本では、79%がそのように回答しています。地政学リスクがより重要性を増し、世界の機関投資家の74%が、地政学リスクの投資環境に与える影響は、過去30年間よりも現在の方がはるかに大きいと回答しています。また、今後5年間にポートフォリオに影響を与えるメガトレンドとして、エネルギー供給の途絶、人口動態の変化、脱グローバル化の動きを挙げています。
前回の調査で、世界の多くの機関投資家はポートフォリオ戦略の再検討をせざるを得ないと回答していましたが、今回の調査では、31%が積極的に見直しを行い、27%がポートフォリオの再定義・変更を行ったと回答しています。48%が資本市場の長期見通しの計算方法を変更、38%が戦術的配分の大幅な変更、27%が戦略的資産配分を根底から変更しています。日本では、48%が戦術的配分の大幅な変更を行ったと回答しています。業態別では、公的年金にやや様子見傾向がみられる一方で、保険会社は配分の見直しや変更を行う傾向がやや強くなっています。
インフレに対処する資産として、インフラ資産を選好
機関投資家の64%がインフレリスクの軽減を強化し、2年以上にわたってインフレ対応戦略を採用すると予想しています。インフレを切り抜けるための資産として、日本の機関投資家の53%がプライベート・インフラ資産を選んでいます。日本の機関投資家はその他、インフレ連動債、プライベート不動産、プライベート・エクイティをインフレ対策として選好しています。また、プライベート資産への傾斜も続いており、パブリック資産価格の下落によってポートフォリオに占めるプライベート資産の比率が高くなっているにもかかわらず、今後5年間に世界の機関投資家の72%がプライベート資産を増やすと回答しています。
オルタナティブ資産への関心は急上昇しており、世界の機関投資家の58%がインフラ、52%がプライベート・エクイティ、47%がプライベート・クレジット、43%が不動産への配分増加を予定しています。第1回、第2回調査における回答は、約25%から35%の範囲内でした。インフレ対策のみならずインフラ資産は様々な投資ソリューションに活用されており、インフラ・デットはオルタナティブ・クレジットとして最も選ばれています。また、農地投資や森林投資への関心も、特に日本の投資家の間で高まっています。日本の機関投資家の24%が農地への投資を増やす予定と回答し、29%が森林への投資を増やす予定と回答しています。前回調査では、これらの資産への投資を増やすと回答した日本の投資家はいませんでした。
重要性を増す気候変動リスク管理および情報開示
機関投資家の61%が投資判断の際に気候変動リスクを既に考慮していると回答し、22%が考慮する予定であると回答しています。「これは、新しいグリーン・エネルギーへの投資、炭素排出量の多い企業や産業への投資削減、気候変動に配慮した経営戦略を採用させるための経営陣とのエンゲージメントにつながります」とヌビーン責任投資統括のエイミー・オブライエンは語っています。
機関投資家の67%は、5年前に比べて気候変動リスクはリスク管理のより重要な要素であると回答しています。この回答比率は米国が最も低く47%、日本が最も高く83%です。しかし、日本では重要性が高いと認識されているものの、気候ストレステストとシナリオ分析がリスク管理のプロセスに標準化されていると回答した比率は39%で、最も高い北欧の71%やグローバルの48%よりも低くなっています。
また、機関投資家の44%は気候変動リスクと指標を開示していると回答、38%は開示の枠組みを構築する方法を検討中であると回答しています。ステークホルダーや規制当局に対して気候変動リスクの開示を行っていないと回答した機関投資家は、16%でした。気候変動リスクは、多くの機関投資家のポートフォリオ目標にとって重要な位置づけとなっています。
気候変動リスク戦略の目標に沿ったインパクト投資
機関投資家の74%が、投資判断の際に環境や社会へのインパクトを考慮しています。このうち61%が、今後インパクト投資がますます重要になると回答しています。日本およびオーストラリアでは、72%が今後ますます重要になると回答しています。インパクトを考慮しない機関投資家は、投資方針に含まれていないことやリターンに対する懸念をその主な理由に挙げています。インパクト投資はリターンを損なわないと45%が回答、23%は損なう、32%は中立と回答しています。
「インパクト投資は多くの投資家にとってまだ新しい分野ですが、案件が多様化しトラックレコードが蓄積されるにつれて、重要性を増すでしょう。インパクト投資への資産配分はリターンと信頼性が課題ですが、弊社は標準化された測定方法、透明性、報告を通じたソリューションを提供することが可能です」とオブライエンは語っています。
インパクトを重視する世界の機関投資家のうち48%が気候変動戦略の目標とインパクトを一致させており、最も好まれている投資先はエネルギー革新(69%)、次にインフラプロジェクト(62%)となっています。一方、日本では、インフラプロジェクトが最も好まれています。社会的投資については、世界の機関投資家の33%が手頃な価格の住宅に関心を示しています。
投資判断にインパクトを考慮する機関投資家のうち、41%がインパクト目標を設定、35%がSDGsに対するKPIをモニター、29%がインパクト投資枠を設定しています。
シニア・マネージング・ディレクター兼ヌビーン・ジャパン代表取締役社長の鈴木康之は、「リスク管理およびインパクト達成の新しい手法を活用するポートフォリオを構築して、新しい市場環境に対応する機関投資家の皆さまをサポートする所存です。プライベート・マーケット、責任投資およびマルチアセット・ポートフォリオ構築における深い専門知識を活用して、投資家の皆さまが大きく変化する世界に対応するために行うアセットアロケーションをサポートしていきます」と語っています。