2024年2月13日
債券
課税地方債: 勢いを増す
2024年第1四半期(1-3月期)、課税地方債市場は国債利回りが上昇する中で比較的堅調な推移を見せました。米国経済は依然として堅調で、地方自治体の信用ファンダメンタルズは底堅い消費と力強い労働市場の恩恵を受けています。限定的な新発債の供給と、質の高い長期資産に対する旺盛な需要に支えられて課税地方債は相対的にアウトパフォームしました。今後は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げを見越してデュレーションが相対的に長い地方債へのシフトが進み、需要はますます高まると当社はみています。
重要なポイント
- 課税地方債は長期国債利回り上昇の影響をインカムゲインの増加とクレジット・スプレッドの縮小で吸収。
- 利回りが低下した場合、目先デュレーションを長期化することがポートフォリオにとって有利なことを投資家は認識。
- 課税地方債市場は、平均以上の利回りとポジティブな需給要因ならびにファンダメンタル要因に支えられ、相対的に堅調なまま第2四半期(4-6月期)に入っている。
見通し
2024年は好調な出足
2024年に地方債市場は非常に力強いスタートを切りました。
2024年は、それまでの積極的なFRBの引き締め政策と好景気のおかげで2011年以来の高い利回り水準で年を明けました。インカムゲインのみから魅力的なリターンを享受できる可能性というのは、10年近く見られなかったダイナミクスです。
名目利回りからインフレ率を差し引いた実質利回りは、2009年以来の最高水準にあります。インフレ率は減速し、短期金利の指標となる足元のフェデラル・ファンド・レート(FF金利)の5.25%をかなり下回る状態を維持しています。
FRBの利下げは2024年後半に開始すると当社は予想しています。過去を振り返ると、このような環境ではイールドカーブのスティープ化が見られました。イールドカーブがスティープ化することは、長期債にとって有利となるはずです。債券が長期であるほどインカムゲインは多くなり、その一方で金利低下とイールドカーブのロールダウンの組み合わせでトータル・リターンもさらに増えるからです。FRBが利下げをすれば、地方債市場が待っているカタリストとなって資金フローが加速的に増える可能性があります。
債券市場では供給が需要を下回ると予想され、発行済み債券のプールが縮小する中で、供給不足によって利回りとスプレッドは抑制されるでしょう。金利の低下によって2024年後半には供給が増加する可能性がありますが、長年にわたる供給の低水準により、供給が増えてもその分は容易に吸収できるはずです。2024年は米国大統領選挙によって独特のダイナミクスが生じており、選挙前に債券を前倒しで発行しようとする発行体も出てくるでしょう。
経済状況の見通しが不透明な中でも、地方債は有利な位置付けにあります。準備金は依然、非常に高い水準を維持しています。経済は今も底堅い推移が続いているものの、リスクオフ市場に転じた場合は、前回の景気低迷期にレジリエンスを示した課税地方債がアウトパフォームすると思われます。ここ数年、債券の信用格付けは、格上げ銘柄が4対1の割合で格下げ銘柄を上回ってきました。課税地方債は堅固な信用ファンダメンタルズを背景に引き続き有望視され、オプション調整後スプレッド(OAS)は今後さらに縮小して、良好なリターンを提供する可能性があります。
経済環境
- インフレ率は前年比で良好なトレンドを維持。FRBは年末までにコアPCEインフレ率がわずかに低下すると予測している。住宅費を除いたコア・サービス・インフレは依然高止まりしているものの、下降傾向をたどり始めている。
- FRBはフェデラル・ファンド(FF)金利を今回サイクルで525ベーシス・ポイント(bps)引き上げた後、2023年7月以降は様子見となっている。FRBの金融政策は依然としてデータに左右され、当社は2024年に利下げを予想しているが、そのタイミングは、インフレ率、賃金、雇用統計次第。
- 米国は底堅い経済成長を示しており、景気後退リスクは低下している。主な要因は、雇用統計、消費支出、家計の余剰貯蓄水準など。資本市場は「ノーランディング」シナリオに傾いているものの、景気後退リスクがなくなったわけではない。
- FRBによる利下げの開始時期やバランスシートの縮小に関する不透明感から、引き続き金利ボラティリティが生じる見込み。経済が減速もしくは後退すれば、金利は予想以上に低下し得る。
地方債市場の環境
- クレジットは引き続き堅調で、レイニー・デー・ファンド(不慮の事態に備えた準備金)は潤沢な水準にある。
- 歳入額は2022年のピークを下回っているが、コロナ前を上回る水準を維持。
- 地方債のデフォルトは引き続き低水準で稀であり、特異であると予想。
- 課税地方債は依然として供給不足の状態が続いているが、大統領選挙に先駆けて発行が増える可能性。
- 投資家はデュレーションの長期化を選好しており、米国地方債のミューチュアルファンドではカーブの長期ゾーンに向けて資金流入がみられる。
- 利回りがより長く高止まりする中、FRBによる利下げを期待する市場心理が優勢となり、需要が回復し始めている。
- 年明けの地方債の相対パフォーマンスは良好。
- 課税地方債のクレジット・スプレッドは引き締まっているが、他の債券市場に比べ、依然として魅力的。
- 地方債は高いインカム創出に基づき、引き続き金利の大幅な上昇やスプレッド縮小がなくても魅力的なリターンが期待できる。
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